センサネットワークで長距離通信を行うために、数理設計研究所が開発した狭帯域スペクトル拡散通信技術、「スペクトラム拡散方式の(SS)の通信装置、及び、その高速同期確率法」、通称MAD-SSを活用し、数理設計研究所と10年以上にわたり共同研究を行っている。

この技術は、低速(10bit/sec程度)であるが、長距離の通信が可能であるという特徴をもつ。一般に、センサネットワークで使用する情報は湿度や温度等、数バイト程度、大きな物でGPSを用いて取得される緯度・経度程度である。故に通信速度が低速である事は特に問題になる事はない。

この技術を利用し、免許不要な微弱無線局で通信を行った場合、500メートル程度の通信距離が確保できる。微弱無線局としてではなく、特定小電力無線などの免許を受け利用する事も考えられるが、この場合には、数キロメートルから数十キロメートルの通信も可能となる。これは、MAD-SSを用いた通信での通信距離である。

この技術を活用し、さまざまなセンサネットワークの応用事例の開発を行ってきた。

現在は、LPWA技術MAD-SSを活用した低電力土砂災害通報システムの構築 (JST 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) トライアウト)

https://projectdb.jst.go.jp/grant/JST-PROJECT-20347547/

に取り組んでいる。

研究概要

これは、近年大規模な土砂災害が多発しており、多くの地域で対策の必要が生じている。しかし従来の土砂災害通報システムは設置運用コストが高く、小規模自治体や個人・企業レベルでの導入が遅れている。そこで研究代表者の持つLPWA (Low Power, Wide Area)利用技術およびセンサ技術を活用し、小規模自治体や個人・企業での導入に対応した、広域の発災状況を低コストで即時に把握可能な土砂災害検知システムを構築する。

本研究では、

(1)小型太陽電池システムで連続稼働する、データ受信/中継ノードの構築

(2)内蔵電池で長期稼働する、土砂災害検知・長距離無線センサノードの構築

(3)システムの運用評価を行う。